2012年9月20日木曜日

おばあちゃんの正論

ある日の夕方、路線バスに乗っていたら、お年寄りの女性が声を上げた。なにかと思って聞き耳を立てると、どうやら若い2人の男に注意している。「周りは静かに乗ってるんだから、騒がしくしないの!」とのこと。私はその騒がしさは全く気にならなかったのだが、並んで腰かけていた2人はそれなりに注意を受け入れたらしく、それ以来声を落として話すようになったようだ。おばあちゃんの言うことは正論なのかもしれないが、多くの人は「我慢できないほどではないがなぁ」と思っただろう。そして同時に、「この後どうなるだろう」とワクワクしただろう。というのも、その路線バスは、近く停車する「某学園前」バス停で大量の学生を呑み込む予定だからである。

「某学園前」バス停に近づいた。その前では、いるわいるわ、部活帰りを中心とした男女が乗り切れないくらい待っている。いつもの光景である。ドアが開き次々と「騒音」が乗り込んでくる。その間、結構な時間がかかり、バスは立錐の余地もないほどに膨れてくる。私は耳目を集中しておばあちゃんの動向を探った。(さすがにあきらめたのか?)と思ったが、しかし、高まる喧騒の間隙をぬっておばあちゃんの「騒がしくしないの!」が聞こえてきた。おそらく3~4人に乗り込むごとに、注意を与えているようだ。注意を受けた学生も仲間に対して「静かに!」と伝え、おばあちゃんの存在を無視はしていないのだが、いかんせん全体として効果は薄いまま「騒音バス」は走る。終点までの間、おばあちゃんの「静かにしなさい!」「どういう教育を受けているの!」という声は、一定間隔で聞こえ続けていた。

相手が数の上でどれだけ圧倒的でも、おばあちゃんの正論はそれに屈せず声を上げ続けた。立派ではある、しかしどうやら多くの支持は得られないらしい。そもそも「正論」とはそういうものなのかもしれない。

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