2012年11月29日木曜日

「市場主義3.0」

最近読んだ本を紹介したい。

市場主義3.0」 山田久(東洋経済新報社)。アメリカを中心とした市場原理至上主義による経済社会システムを「市場主義1.0」、北欧をモデルとし欧州諸国が目指した経済社会システムを「市場主義2.0」、今後日本が進むべき経済社会システムを、これらのハイブリッド版としての「市場主義3.0」と名づけ、その諸政策を提示している。著者が「市場主義3.0」の基本的特徴を挙げているので、以下少々長くなるが引用する。
「 第1に、産業システムとしては、公的規制の緩和・撤廃を進め、企業の新陳代謝を促して時代の要請に合う形で産業構造の転換を図る。既存産業分野を公的に保護しようという発想は基本的に有しない。
 第2に、労働市場システムとしては、産業構造転換に伴う労働移動を促進する。公的な職業紹介・職業訓練は公平にサービスを受けられるようにその費用は政府が保障する一方、サービスの提供は民間事業者に任せる。
 第3に、環境制約を経済成長の促進要因としてとらえ、環境保全と経済成長の両立を目指す。北欧のデカップリングの考え方や米国のグリーン・ニューディールがその具体的な形である。
 第4に、社会保障システムとしては、年金・医療・介護分野など引退世代向けについては給付を抑制する。一方、保育や職業訓練など現役世代向けについては費用を公的に負担して社会的公平を確保する一方、サービス供給主体は民営を基本として競争を促進する。
 第5に、国と地方の関係では地方分権を進め、地域経済の自立を目指す。中央から地方への財源移転はナショナルミニマム対応分に抑え、各自治体で行政サービス内容と負担との選択が行われる。」

仕事がら、社会保障制度や労働市場システムの今後については関心の高いところである。年金受給者や請求手続きをする人から、「これではやっていけない」という怒りの交じった声を耳にすることがある。実際に生活保護も考えざるをえない年金額である場合もあれば、家のローンも子育ても終えたこれから受け取る年金額が20代の若者の年収よりも多い場合もありそうだ。今年の3月に大学を卒業した56万人のうち、非正規として就職したり就職も進学もしていない人が12万人に及ぶという。年金・医療・介護といった主に高齢者向けの給付と、若年者を中心とした現役世代への雇用に関する支援とのバランスをいかに図っていくか、これが待ったなしに解決すべき課題であることについて異論は少ないだろう。本書のなかで著者は以下のように述べている。公的年金制度は極力スリム化する一方、子育て支援策および労働市場政策については強化し、高齢世代に偏った受益構造を是正する必要がある。そうして世代間の受益の公平性を是正したうえで、世代間で偏りなく徴収できる消費税を引き上げることが望ましい。」

「特例水準」として据え置かれた年金額が、来年10月以降段階的に、本来の支給額に向けて引き下げられることとなった。これにより年金受給者の「怒り」は増すことになるだろう。「世代間格差」が語られて久しいが、高齢世代と現役世代双方を納得させるシステムの構築が求められる。それには政治による説得が欠かせない。

衆議院選挙が近い。原発・消費税・TPPあるいは地方分権が争点となって、生き残りをかけて政党が入り乱れている。しかし、少数の政治勢力を除いて、「高齢世代の給付抑制と現役世代への支援強化」についてはおおまかに意見が一致しているのではないか。「『高齢世代の給付抑制と現役世代への支援強化』の是非」でまとまってしまえばわかりやすいように思うが、各政党はこの点についての主張をあえて避けているのでは、とかんぐってしまう。

それだけ高齢世代の声が国の政策を決定づけてしまう、そういう人口構成になってしまっているということを如実に示している。

0 件のコメント:

コメントを投稿