2014年3月19日水曜日

フィギュアスケート考

ソチオリンピック・パラリンピックが終わった。フィギュアスケート・浅田真央選手のフリープログラムの演技は、前夜のショートプラグラム16位という伏線もあいまって、多くの人に感動を与えたようだ。私自身は、ショートプログラムは生中継で観ていたのだが、フリープログラムの演技は観ずじまいだった。「すばらしかった」というので、後日、NHKのハイライト番組を録画してその演技を観てみた。23回見返しているうちに、あることに気づいた。今回トリプルジャンプを計8回跳んでいるのだが、難易度が高いという「トリプルアクセル」を、一番最初に跳んでいる。そんなことは1回観れば分かるのではあるが、しかし、そのジャンプのタイミングが、私の琴線に触れてしまったようだ。

使用曲はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番第1楽章」。荘厳な鐘の音をイメージしたイントロからテーマに移り変わるそのタイミングで、トリプルアクセルを跳び、そして見事成功させた。圧倒的なオープニングである。その後は、時折、天上に微笑むように笑顔を交えながら、流れに乗ってスピン、ジャンプを披露する。8種類のトリプルジャンプを成功させ、それまでの流麗な楽曲がリズミカルに変わってからは情熱的なステップを踏み踊り、そして最後の最後にスパイラルを決めフィニッシュ…。断っておくが、私はフィギュアスケートに詳しくはない。今までなんとはなしに観ていたし、それこそオリンピックの時ぐらいしか観ていなかったのである。だが、今回の浅田選手の演技を観てその見方が変わった。

フィギュアスケートとは、楽曲を選び(編集し)、振りつけがあり、全体の構成(プログラム)があり、そして選手の演技があり、それらの結晶としての「作品」なのだ、と思うようになった。その作品は、その演者に高難易度の技術がなければ成り立たず、そしてその成否は、そのたびごとに演者の最高のパフォーマンスにかかっているのである。今回の浅田選手の演技は、楽曲と振りつけにより組みたてられたプログラムをほぼ完璧に演じた、という意味で、作品の「完成形」を見せてくれたものなのだろう。試合後のインタビューで浅田選手は、「やりたかったプログラムなので」という主旨の発言をしていたが、その満ち足りたような表情は、“メダルを獲る”ということとは違う次元の価値が、そこには確かにあったのだという証のように思える。

この楽曲選びと振りつけを担当したタチアナ・タラソワさん(バンクーバー五輪時の浅田選手のコーチ)が、ロシアのテレビ局の放送でフィギュアスケートの実況解説を担当した。トリプルアクセルが決まった瞬間、彼女は「ウッ」という気合の入ったような声を上げ、浅田選手の演技が終わると、感極まった声で「スパシーバ、マオチャン」と繰り返し言っていた。「ありがとう、真央ちゃん」…この作品の「作者」のひとりとして、また、その作品の「鑑賞者」として、それを大舞台で完成させた浅田選手への謝意と敬意がこめられたコメントなのだろう。

私はといえば、その後ビデオを繰り返し30回くらい観ただろうか。このプログラムは傑作だと思う。ありがとう、真央ちゃん。

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